慢性腎臓病
特に高齢の猫ちゃんに多い病気です。早期発見により進行を遅らせることが可能ですのでまずは病気をよく理解して、快適に長生きさせてあげられるようにしましょう!
どんな病気?
原因としてはさまざまな腎疾患が挙げられますが、共通するのは慢性的にじわじわ進行するということです。腎障害が進行し、腎臓から尿への老廃物の排泄がうまくいかなくなると腎不全、さらには尿毒症を引き起こし、最終的には死亡してしまいます。一度悪くなってしまった腎臓の組織は治療しても元には戻りませんので、なるべく早期に発見して進行を遅らせるような治療をするのが重要となります。
注意する症状は?
水を飲む量が増える、尿の量が増える(多飲多尿といいます)、食欲低下、体重減少、嘔吐、脱水、貧血、口内炎などが一般的です。また、腎性高血圧から眼や脳、心血管系に異常をきたすケースもよく見られます。
中でも腎臓病の早期発見に重要なのは多飲多尿という症状です。高齢の子で最近水を飲む量や尿の量が増えた、という場合は獣医師に相談するようにしてください。
必要な検査
尿検査、血液検査、超音波検査などを組み合わせて診断します。腎臓病の早期発見に重要なのは尿検査で、血液検査よりも早期に異常を見つけられることが多いです。高齢の子の健康診断では血液検査だけではなくなるべく尿検査も受けるようにしてください。
腎臓の超音波検査
超音波検査では腎臓の構造異常や腫瘍の疑いがないかを調べます。腫瘍の可能性があれば超音波で観察しながら注射針を刺して細胞診検査をすることも出来ます。
IRISステージ分類(重症度)と悪化因子の検査
各種検査で慢性腎臓病と診断されたら、重症度のステージ分類を行います。食欲低下や体重減少など目に見えて症状が出てくるのはステージⅢ(腎不全期)以降のことが多いと思います。
ステージ | クレアチニン(Cre) | 病期 | 残存腎機能 |
---|---|---|---|
Ⅰ | <1.4(犬) <1.6(猫) | 初期腎疾患?腎機能不全期 | |
Ⅱ | 1.4?2.0(犬)1.6?2.8(猫) | 腎機能不全期?初期腎不全 | 33% |
Ⅲ | 2.1?5.0(犬)2.8?5.0(猫) | 腎不全期 | 25% |
Ⅳ | >5.0(犬、猫) | 尿毒症?末期腎不全 | <10% |
※脱水していない時のクレアチニン値を用いる
また、高血圧や蛋白尿は腎臓病を進行させてしまう悪化因子として重要なためまずはその有無を検査し、必要があれば治療を開始します。猫ちゃんでは甲状腺機能亢進症も腎臓病の悪化因子として重要なので検査をお勧めしています。
治療
慢性腎臓病の治療の目的は大きく2つあると考えます。まず1つは進行を遅らせるための治療、もう1つは症状を取り除く治療(対症療法)です。
進行を遅らせる治療はいくつかありますが、まずやっていただきたいのは食事療法です。腎臓病用療法食に変更することで大幅に余命を延長することができます。また、悪化因子である高血圧、蛋白尿、甲状腺機能亢進症があれば投薬により治療します。他にも活性炭やリン吸着剤などの治療もあり、ケースバイケースで使用しています。
対症療法は実際に症状が出てしまっている場合に行う治療です。腎臓病が進行して腎不全期に入ると、食欲低下、脱水、嘔吐、貧血など様々な症状が出てきます。点滴治療を主体に胃薬や吐気止め、貧血に対するホルモン剤(エリスロポエチン)注射などの治療をします。対症療法は、少しでも苦しいのを取り去って快適な生活を送ってもらうために行います。特に、脱水は急激に腎臓病を悪化させますので定期的な点滴は必須となります。
まとめ
結局何が言いたかったのかというと・・
多飲多尿というのは一つの症状で、慢性腎臓病を早期に発見するための重要なサインです。なるべく早期に腎臓病を発見して、進行しないように治療を始めてあげましょう!