フィラリア症
フィラリア症に関してはよくご存知の方も多いと思いますが、非常に重篤な感染症であり治療も難しい病気です。予防の徹底により発症は減少していますが、当院でも年に数例の感染を確認しています。ワンちゃんの生活において重要な疾患のため、病気についてもう一度復習してみてください。
フィラリアの生活環
フィラリア症は犬糸状虫という10~20cm程度のそうめん状の寄生虫が肺動脈や心臓に寄生して起こす疾患です。ここでは犬糸状虫がどのように感染して、育っていくのかを説明します。
暖かくなってくると感染が始まります
すでに感染してしまっている犬の血液中にはミクロフィラリアという子虫が多数産出されています、この状態の犬から蚊が血液を吸うと、子虫が蚊の体内に入ります。ミクロフィラリアは蚊の体内で感染子虫という状態まで成長し、蚊が犬を吸血する時に今度は犬の体内へと侵入します。侵入した感染子虫は犬の体内で移動しながら成長を繰り返し最終的には心臓にたどり着き、ミクロフィラリアを血液中に産出するようになります。
ミクロフィラリアから成虫まで犬の体内だけでは成長できません、一度蚊の体内で感染子虫まで発育する必要があります。そのため予防薬を投与するのは蚊が発生して感染子虫が存在する時期(5月~12月)に限られています。
フィラリア症について
フィラリアの成虫が心臓に寄生してしまうと心不全を主体とした様々な異常がでてきます、これをフィラリア症といいます。主な症状としては咳、活動性の低下、腹水、貧血など、また肝臓や腎臓にも影響がでてきます。寄生数が多く重症になってしまうと死亡してしまいます。
治療としてはフィラリアの駆虫と心不全を起こしている場合はそれに対する治療が必要になってきますが、駆虫に関しては副作用のリスクが高くそのため治療が非常に難しい病気です。フィラリア症に関しては徹底した予防を強くお勧めします。
予防について
フィラリア症は治療は難しいですが、予防に関しては安全に効果的に行えます。以下の点に注意してしっかり予防してあげましょう!
予防薬は安全なお薬ですが、それはフィラリアに感染していない場合に限ります。基本的に毎年の予防薬投与を開始する前に血液検査でフィラリアの感染が無い事を確認してからでないと安全に処方する事ができませんのでご了承ください。
※フィラリア感染犬に予防薬を飲ませると重篤な副作用が出る場合がありますのでご注意ください。
フィラリア予防薬はワクチンやノミの予防と違って投与してから効果が持続するものではありません。感染した子虫が体内で育たないように月に1回駆虫して予防しています。例えば、最後の薬を飲ませようかという時に「もう蚊がほとんどいないから・・」と言って止めてしまうと予防がうまくいかない場合があります。その年の感染の可能性が無くなった時に最後の投薬(駆虫)をして終了になります。
(当院では5月~12月の投与をお勧めしています。)
薬の効果が発揮されるには体内への吸収が必要です。嘔吐や下痢などの症状が見られる時は投与を数日延期して調子の良い時に飲ませるようにしてください。
検査について
毎年行う予防薬投与前の検査はフィラリア感染の有無を調べるだけの検査です。安全に予防薬を投与するのと、もし感染してしまっても早期に発見できるように毎年実施します。この段階で、もしフィラリア感染が疑われた場合はレントゲンや超音波、血液検査等で病勢を確認し治療方法を検討します。
フィラリア検査時に健康診断として一緒に貧血や肝臓、腎臓などの血液検査をお勧めしています。ご希望の方は採血の前にお申し出下さい。
※詳しくは当院スタッフまでお問い合わせください。